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May 10, 2006

世界の作家32人によるワールドカップ教室

052wcup

続いて新刊訳書のお知らせです。

『世界の作家32人によるワールドカップ教室』
マット・ウェイランド、ショーン・ウィルシー編、白水社、2800円

アンソロジー(ワールドカップ関連のデータ付き)で、32人の作家が来る6月のワールドカップ出場国32カ国をテーマにエッセイを書いています。原題はThe Thinking Fan's Guide to The World Cup 「考えるファンのためのW杯ガイド」
考えるファンということは、Not Thinking Fan もいるんでしょうね。

翻訳は8人がかりです。私はイングランド、ウクライナ、ポーランド、オーストラリア、ポルトガルを翻訳しました。
ポーランドは共産圏から自由化への転換に苦闘する社会で、「連帯」という世界でも類のない大衆による政治行動の歴史をもつ国ならではの葛藤について書かれています。ちょうど『貧困の終焉』でポーランドの経済改革の一章があったので、データ的にはやりやすかった。革命はワールドカップよりも血を沸き立たせるものらしいです。

イングランドはベストセラー作家で、熱狂的なアーセナル・ファンとして有名なニック・ホーンビィが書いています。ここでもアーセナル一筋。有名作家の文章を翻訳するのは緊張しちゃいますね。ちょっと論理に飛躍があるのが、いかにも作家という感じでした。タイトルにもある「作家」って、サッカーとかけているの?

ウクライナは、天才的なストライカー、アンドリー・シェフチェンコ(シェヴァ)が有名。同じ名前をもつウクライナの国民的詩人、タラス・シェフチェンコと対比して、ウクライナの哀しみの歴史をふりかえる。チェルノブイリもウクライナにあります。このエッセイを読むと、シェヴァの試合が見たくなります。ワールドカップが楽しみ!

オーストラリアは『ポビーとディンガン』で人気作家になったベン・ライスが書いています。これも、ちょっとじんとくるいい話。オーストラリアは今後アジア・リーグに参加することになったので、日本もうかうかしていられません。オーストラリアは日本と同組なので、この一戦も楽しみですね。オーストラリア、思いのほか強そう。というか、ワールドカップに出場する国は、どこも強いのよね。

ポルトガルは、いちばん分量も多くて、わりと苦労しました。舞台がマデイラ島なのです。ポルトガルだからといって、フィーゴのフィの字も出てこない。けど、クリスティアーノ・ロナウドは出てきます。(ついでにいえば、越川さんが「あとがき」に書いているアドリアーノ・ロナウドはクリスティアーノのまちがいじゃないかな?)ポルトガルのエッセイはサッカーというより、ほとんどサーフィンについて、です。それもまたおもしろい。

ほかのかたが翻訳したエッセイも何本かは英語で読んだけど、どれも作家ならではのひねりが効いていて、さすがに作家というのは違うなーと感心したものでした。翻訳で全部読むのが楽しみ、楽しみ。

去年の5月、トルコのイスタンブールへチャンピオンズリーグの決勝をいっしょに見にいった実川元子さんも翻訳者の一人です。パラグアイ、スウェーデン、コートジボワール、セルビア・モンテネグロ、チェコと渋い選択(自分でこの国がやりたい、と志願したそうです。私は編集の藤波さんにおまかせでしたが。)

すっごく楽しい仕事でした。こういうのまたやりたいな。

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Comments

ようやく読みました。『週刊朝日』の佐山一郎さんの書評では、日本のエッセイは凡庸で「1次リーグ敗退」なんて書かれてましたが、kunikoさんの訳されたところはどれもおもしろかったですね。
ちょっとサッカーからずれたところを書いているのが意外にもその国のサッカーの背景をほろ苦く描き出していたりして。
オーストラリアがなんでそんなにアジアリーグに入りたがってるのかようやくわかりましたよ。
他のところもそれぞれおもしろかったのですが、原著をお持ちであろうkunikoさんに聞いてみたいことがあります。オランダの章のp.189「もっともナチュラリストが多い」は「ナチュリストが多い」の間違いじゃない?

Posted by: EMY | June 19, 2006 at 08:57 PM

EMYさん、ご指摘ありがとう。そのとおりでした。ぜんぜん気がつかなかった。よく気がつきましたねー。この本は、原稿が書きあがるたびに少しずつメールでファイル送信されてきたので、原書は手元にないんです。翻訳しているあいだにも、訂正の原稿が来たりして、同時進行という感じでした。それもなかなか興味深かったです。作家はどのように文章を推敲するのかがわかって。このナチュリストはヌーディストとすべきですかね。いちおう訂正原本は作ってあるのですが。
p79 ジェリー・シーンフェルト→ジェリー・ザインフェルド
p108 ブラジルの大統領にといってやりたいよ→ブラジルの大統領にいってやりたいよ
p114 ヴァレンシア→バレンシア
p189 ナチュラリスト→ヌーディスト
p492 アドリアーノ・ロナウド→クリスティアーノ・ロナウド
ほかにも間違いがあったらご指摘お願いします。優勝はどこなんでしょうね。

Posted by: kuniko | June 19, 2006 at 09:25 PM

あー、やっぱりね。ここは「オランダ人ってば、こんなに変!」というのを列挙してるところなので、ネタ的に面白いのはこっちでしょ、と思ったのでした。
それと、日本ではナチュリスムという言葉が一般化してないから紛らわしいよね。私もその昔、オーストラリアで「ナチュリスト」という雑誌を「ナチュラリスト」と思って手にとって、びっくりしたことがあって。でもその勘違いが我ながらおかしくて、1冊買って、日本の友人に送ったな。

翻訳裏事情、なんと執筆と翻訳が同時進行だったのですか。それで日本でもワールドカップ開幕に間に合ったというわけですね。

えーと、他に気がついたところを書きますね。
p.341の「私の第二の故郷であるオーストリア」は「オーストラリア」かな?

Posted by: EMY | June 20, 2006 at 03:05 PM

ありゃりゃ、これは私のところですね。オーストラリアとオーストリアのミスは全部潰したつもりだったのに、残っちゃいましたか。赤字入れたつもりだったんだけどなー。がっくり。シュートミスした柳沢の気持ちがわかるなー。

Posted by: kuniko | June 20, 2006 at 07:04 PM

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