May 10, 2006

世界の作家32人によるワールドカップ教室

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続いて新刊訳書のお知らせです。

『世界の作家32人によるワールドカップ教室』
マット・ウェイランド、ショーン・ウィルシー編、白水社、2800円

アンソロジー(ワールドカップ関連のデータ付き)で、32人の作家が来る6月のワールドカップ出場国32カ国をテーマにエッセイを書いています。原題はThe Thinking Fan's Guide to The World Cup 「考えるファンのためのW杯ガイド」
考えるファンということは、Not Thinking Fan もいるんでしょうね。

翻訳は8人がかりです。私はイングランド、ウクライナ、ポーランド、オーストラリア、ポルトガルを翻訳しました。
ポーランドは共産圏から自由化への転換に苦闘する社会で、「連帯」という世界でも類のない大衆による政治行動の歴史をもつ国ならではの葛藤について書かれています。ちょうど『貧困の終焉』でポーランドの経済改革の一章があったので、データ的にはやりやすかった。革命はワールドカップよりも血を沸き立たせるものらしいです。

イングランドはベストセラー作家で、熱狂的なアーセナル・ファンとして有名なニック・ホーンビィが書いています。ここでもアーセナル一筋。有名作家の文章を翻訳するのは緊張しちゃいますね。ちょっと論理に飛躍があるのが、いかにも作家という感じでした。タイトルにもある「作家」って、サッカーとかけているの?

ウクライナは、天才的なストライカー、アンドリー・シェフチェンコ(シェヴァ)が有名。同じ名前をもつウクライナの国民的詩人、タラス・シェフチェンコと対比して、ウクライナの哀しみの歴史をふりかえる。チェルノブイリもウクライナにあります。このエッセイを読むと、シェヴァの試合が見たくなります。ワールドカップが楽しみ!

オーストラリアは『ポビーとディンガン』で人気作家になったベン・ライスが書いています。これも、ちょっとじんとくるいい話。オーストラリアは今後アジア・リーグに参加することになったので、日本もうかうかしていられません。オーストラリアは日本と同組なので、この一戦も楽しみですね。オーストラリア、思いのほか強そう。というか、ワールドカップに出場する国は、どこも強いのよね。

ポルトガルは、いちばん分量も多くて、わりと苦労しました。舞台がマデイラ島なのです。ポルトガルだからといって、フィーゴのフィの字も出てこない。けど、クリスティアーノ・ロナウドは出てきます。(ついでにいえば、越川さんが「あとがき」に書いているアドリアーノ・ロナウドはクリスティアーノのまちがいじゃないかな?)ポルトガルのエッセイはサッカーというより、ほとんどサーフィンについて、です。それもまたおもしろい。

ほかのかたが翻訳したエッセイも何本かは英語で読んだけど、どれも作家ならではのひねりが効いていて、さすがに作家というのは違うなーと感心したものでした。翻訳で全部読むのが楽しみ、楽しみ。

去年の5月、トルコのイスタンブールへチャンピオンズリーグの決勝をいっしょに見にいった実川元子さんも翻訳者の一人です。パラグアイ、スウェーデン、コートジボワール、セルビア・モンテネグロ、チェコと渋い選択(自分でこの国がやりたい、と志願したそうです。私は編集の藤波さんにおまかせでしたが。)

すっごく楽しい仕事でした。こういうのまたやりたいな。

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April 30, 2006

貧困の終焉

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新刊訳書が出ました。

『貧困の終焉』ジェフリー・サックス著、鈴木主税・野中邦子共訳、早川書房、2300円

2025年までに世界の貧困をなくす。そのために世界の先進工業国は何をすべきか、国連のアナン総長の顧問を務めるサックス教授(コロンビア大学地球研究所所長)が具体的に数字をあげて提言しています。貧困国を救うのにいくら必要か、負債を抱えた先進国がその金をどうやって拠出できるか、そして、なぜそれをすべきなのか、うんうんとうなずきながら、翻訳しました。とても説得力にとんだ本です。内容には感心しながら、それでも、翻訳にはとても苦労しました。経済用語には弱いので。それに統計学にも苦労しました。

ぜひ読んでもらいたい本です。
ホワイトバンドを買うのにくらべたら、高いですけど、じつはこういう本を読んでいる人って、モテると思います。(軟弱なお奨めの仕方ですみません)

U2のボノが書いている序文もなかなかいいです。

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April 16, 2006

悪魔と博覧会

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新刊が出ました。25日発売です。右はカバーをとったところ。

『悪魔と博覧会』

著者:エリック・ラーソン
訳者:野中邦子
出版社:文藝春秋
刊行年:2006年4月25日
判型:46版ハードカバー
ページ数:510 分厚いです!
ISBN: 4-16-368090-X
値段本体:2952円
原書:the Davil and the White City Murder, Magic, and Madness at the Fair That Changed America by Eric Karson, 2003
帯の文句:超大国アメリカの出発点を画した壮麗な博覧会――その陰に女性を解剖し、殺す美男の医師が潜んでいた。
医師の名はH・H・ホームズ。英国の切り裂きジャックと踵を接してアメリカに現れた連続殺人犯。一人の刑事が足跡を追って全米を巡り、ついにその仮面を剥ぐ。世界博覧会の栄光と異様な犯罪の対照を描く重量級ノンフィクション。

〈訳者からひとこと〉
帯の文を読むと犯罪ものみたいですが、私としては芸術(建築)と社会のあり方を描いた、きわめて人間的な群像劇と読みました。博覧会を成功させるまでの苦難と努力はまるでプロジェクトXのようです。
シカゴの建築も魅力たっぷりで、ついにシカゴまで行って建築ツアーを敢行したほど。
野心的で、ある意味での才能に恵まれ、ハンサムで、人間的な魅力をもち、その一方で大きなコンプレックスを抱えた建築家バーナムと殺人者ホームズ。共通点のある二人の人間が、一人は栄光を求め、一人は暗黒の世界に堕したのか。人間性の謎を思わずにいられない。
博覧会をめぐる大勢の人びとの成功と挫折、輝きと失意にいろどられた個々の人生を見るのもすごく面白かった。
『栄光と夢』『アスピリン・エイジ』『オンリー・イエスタデイ』などの本が大好きだったことからしても、私がこの本に惚れこんだのは当然という感じです。
とても好きな本。
装丁も、一見、原書とまるで違うので「えっ?」と思いましたが、よく見ると、文字が人のかたちになっていて、色はオペラピンクだし、カバーを外すときれいな白とブルーで、いいなぁと思いはじめました。

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January 04, 2006

「謎のプリンス」の謎

ハリー・ポッターの邦訳書の予約が始まったとのこと。もう英語版を読んじゃったので関係ないとはいえ、邦題が気になる。

原タイトルはHarry Potter and the Half-Blood Princeだったのが、邦題は『ハリー・ポッターと謎のプリンス』になっている。「混血」という言葉がときとして差別的表現につながることはある。でも、ハリー・ポッターという話はそもそも、かなり差別的な世界が描かれている。「純血」の魔法使いであるドラコが、「混血」のハーマイオニーを「汚れた血」と呼んでいじめたり、差別したりする場面はしょっちゅう。ハグリッドが巨人族の「血」を引くとか、ハリーがマグルの「血」を引くとか、そういうのがやたら出てくる。

それなのに、いまさらタイトルだけ「混血」を使わないのはどうなんでしょうね。べつに「どうしても混血にすべき」とは思わないけどね。しかし、それにしても「謎のプリンス」というフ抜けた表現はどうかと思う。 

「ハーフ」という表現にも「なんで半分なんだ」と不満を表明する人がいて、「ダブル」と呼ぼうという運動がある。そのせいか、このごろハーフという言葉はほとんど聞かれなくなった。昔は、ゴールデン・ハーフなんていうアイドル・グループがいたものですが。

一方、沖縄では、アメリカ人とアジア人の混血の人びとが「アメラジアン」と自称している(自称なんだと思うが)。自分でそう称するのだから、かまわないとは思うのだけど、「アメラジアン」という語感も、私はどうも好きになれない。たんなる耳慣れない造語に対する違和感なのかなぁ? 「MOTTAINAI」とか、「ほっとけない」という言葉にもなんとなくむずむずする感じがあって、なかなかしっくりこないのである。しかし「混血」ということばにむずむずしちゃう人もまたいるんでしょうね、きっと。

ところで、映画の『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』も見てきた。が、これも映画そのものはさておき、字幕がどうも下品に感じられて、ひっかかった。子供向けに親しみやすさを出そうという意図なのかもしれないが、ややくだきすぎではないだろうか。格調高く、とはいわないけれど、せっかくイギリスの寄宿舎の話なんだし……。

ま、翻訳者という職業柄、チェックが厳しくなるのはしかたがない。

映画そのものは、あの長い話をよくまとめたとは思うが、やはり細部の説明が不十分ではないだろうか。もちろん、原作を読んでいる人向けにはしょってあるんでしょうが。読んでいないとどうなんでしょうね。私はすでに読んじゃってるので、読んでないとどうなのかがよくわからない。映画を観てから本を読むと、ああ、そうだったのか、と納得いくかもね。夢に出てくる屋敷の説明なんか何もなし。マッドアイは、私のイメージではもっと小柄で痩せていて基地外地味た(変換できず←これも差別語)男という感じだったが。

ヴォルデモート役にレイフ・ファインズ、女性記者にミランダ・リチャードソンと、ほんとにイギリスの舞台俳優総ざらえという豪華配役である。それだけに、セリフの格調高さはやはり欲しいところ。

あとは、ロバート・カーライルとユアン・マクレガーとアンソニー・ホプキンス、それにショーン・コネリーなんかが出るといいんじゃないでしょうか……もう、新たな登場人物はそんなにいないか。

余計なお世話ですが、ハリーの初恋の相手のチョー(だっけ?)はもう少し美少女だといいんだけど。あと、ジニーもね。この次の作品までに、もうちょっと磨いておいてください。


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October 22, 2005

白髪のカツラが欲しい

051022manga(構成)すがやみつる・(作画)横山えいじ、ダイヤモンド社、1500円

友人のすがやさんからいただいた『マンガでわかる小説入門』、一気読みで、途中、なんども笑わせてもらいました。白髪のヅラで「余談ながら……」(誰だ!)というのがウケた。

読み終わってすぐ一太郎を起動し、ためしに目次を作ってみたりするのは、おっちょこちょいもいいところである。すぐその気になる。というか、それほど誰でも小説が書けるんじゃないか、と思わせるすぐれた入門書だということ。

小説を書くモチーフ(動機)が「めがねっ子のミニスカ、巨乳の女の子を活躍させたい!」だけでいいのかーそうかーと、そのへんが目からウロコだった。

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June 24, 2005

文庫と労働意欲

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パリから家に戻ってきたら、新潮文庫の『キッチン・コンフィデンシャル』(amazonへはこちら)が届いていた。文庫化につき、どなたにも献本はしませんでした。単行本のときにかなり文章は練ったのであまり手を加えず、事実関係をいくつか修正したのと、「訳者あとがき」だけ書き直した。

文庫化というのは不労所得みたいな気分でお得感がある。とはいえ、単行本のときにかなりの労働はしているし、文庫化にあたって読み直して修正を加えるという労力もかけている。翻訳書の単行本の印税については、正直な話、「こんなに苦労してこれだけか!」と思うことがあるので、文庫化されてやっと割に合うかどうか、という状況。だから文庫化はまったく「不労所得」ではないんだけどね。

しかし、そもそも私がやってるような本は文庫化されないことのほうが多いので、文庫化されるととてもうれしい。一方、最初から文庫という場合もあって、最近部数が減っていることもあり、ぜんぜん儲けにならなかったりもする。この「最初から文庫」についても出版界の歪み(というか状況変化)が反映されている。かつての出版界において、文庫とは長く読みつがれる名作であり、新書というのは専門分野を一般向けに解説した入門書だった。ところが、いまや文庫も新書もただの安い本になってしまっている。

読み捨て使い捨てで作っていると、そのうち飽きられると思うんだけどね。だとしても、昔のように趣味としての分野で読書が特別なものと見なされる時代はもうぜったいに戻ってこないだろう。本はこれからますますマイナーなものになっていくはず。

安い本しか売れない状況、マイナーな趣味に特化する状況。どっちになっても、出版翻訳者の生活は厳しくなるばかり……というクラーイ予測をしときます。

それはさておき、印税がふりこまれるととたんに怠け癖が出て遊び暮らす……というか、すでにトルコ・パリ旅行で散財しちゃってるのだ。でも、あらためてこれで一年暮らすんだからね、と財布の紐を締めるのであった(遅いよ)。

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May 01, 2005

警察とミミリー

横山秀夫『半落ち』(講談社)を読んだあと、『陰の季節』『動機』(文春文庫)『顔』(徳間文庫)を読了。非常にリーダブルですらすらと読めるのだが、その分、ひっかかりがないせいか、中身がすーっと消えていきそうな気がする。これってエンターテインメントの特徴ではあるが。現実を忘れさせる効用はある。うまい。

警察小説といっても、刑事が主役ではなく、監察とか内部監査とか、管理職が主体になっていて、少し古臭い組織のひずみや人間関係が描かれている。警察という特殊な世界を覗きみるおもしろさと、サラリーマン社会に通じる葛藤が人気を呼んでいるのでしょうね。

昔、桜田門の警視庁へ行ったことがある。エリート警視に警察用語(おもに階級)の英語と日本語の対応表をもらって、ついでに話を聞いたのである。スーツをびしっと着こなして、当りはやわらかだけど眼光鋭く、頭がよさそうで、すごくかっこいい警視さんだったが、あとでテレビを見ていたら国際犯罪の担当でロンドンへ、と報道されていて、さすが出世する人はちがう、と思ったことがあった。いずれは警視総監か?

警察と無縁の世界を描いた庄野潤三『うさぎのミミリー』(新潮文庫)。このシリーズは前からファンなのである。「ふーちゃん」のころから。

同じ記述のくりかえしがさらに増えていて、これでいいのか、と思うのだが、もちろんこれでいいのだ。こういう老後が送れたら幸せだとは思うけど、私には無理でしょう。「うれしい」「おいしい」「よかった」「ありがとう」ということだけ書いてある。「いやだ」「嫌い」「うるさい」「迷惑」なんていう言葉がいっさい出てこない。とはいえ、「人間だもの」の世界とは一線を画しているのである。

しかし、これ「ほのぼの」で片付けちゃっていいの? いけないよね? 一種、シュールリアルなものがあると思うんだけど、深読みしすぎか。この穏やかさ、平和さは、ある意味不気味かもしれない(くない?)
 

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April 25, 2005

自分の訳した本と対面

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書店の棚で自分の訳した本を見ることはよくあるけど、今日はびっくり。
よくランチを食べにいくイタリアンの店で、珍しくカウンターに坐ったら、目のまえのカウンターの上に自分の訳した本があった!
『キッチン・コンフィデンシャル』と『世界を食いつくせ!』
照れくさかったが、私が訳者ですと名乗ってきた。
でも、シェフはまだ全部読んでないといってた。ま、そんなもんでしょう。
じっさいに読者が目の前にいると、誤訳があってすみませんと謝りたくなる。絶対に気づいてないとは思うけど。

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March 04, 2005

いやなやつ

このあいだ読書会で『砂の器』(松本清張)を読んだので、DVDを借りてきてみた。中居くんのじゃなくて、昔の映画。野村芳太郎監督、刑事役に丹波哲郎と森田健作。天才音楽家の和賀には加藤剛。時代からして清張の原作では、この音楽家が黛敏郎をモデルにしたんじゃないかという説もあるが、加藤剛にはちょっとそんな雰囲気がある。原作では現代音楽の不協和音がトリックに使われているが、さすがにそれは非現実的だし、絵的にも難しいので(B級SFみたいになってしまう)、映画ではカットされていた。読書会でもその部分は不評だったのだ。

パトロンの政治家役が佐分利信でその娘が山口果林、父親役が加藤嘉、殺されるのが緒方拳、恋人役が島田洋子……と、キャストを書いてどうする。渥美清がちょい役で出ている。映画俳優らしい俳優がいた時代の日本映画という感じ。

ついでに『黒革の手帖』も読んでみたんだけど、清張の作品は主人公が悪者なので、後味が悪いものが多いんじゃないだろうか。主人公は犯罪者なのだが、読んでいるうちについ感情移入してしまい、犯罪が露見しなければいいのに、という気分になってしまう。読者に犯罪者の気持を味わわせ、悪徳の魅力をバーチャルで体験させることによってガス抜きをし、実際に犯罪に手を染めさせないという清張の教育的配慮だろうか? それとも、犯罪者の気持になって読んでいくうちに、最後には破綻を来たし、その挫折感を味わわせるためか。

『砂の器』はいちおう刑事が主人公だから犯人逮捕で決着がつくのだが、和賀にも共感する部分がある。しかし、そもそも恩人をなぜ殺さなければならないのか。口止めするだけでいいじゃないかという意見も出た。しかし、恩人だからこそ殺したいという気持になることってあるよね。ない? 私はそういう気持がわかるような気がする。冷たくされたとか、関わりのない相手だったら、そこまで心が乱されないんじゃないか。世話になった恩人だからこそ、というねじれた心理。とくに戦後の時代を生き抜いてきた子供にとっては。

戦後のどさくさがトリックの重要な部分というのはミステリーには都合がいい。京極夏彦が京極堂シリーズの時代を戦後数年という時期に設定したのも、同じ利点があるからでしょう。

『黒革の手帖』も主人公は犯罪者なので最後は哀れな末路を辿るのだが、こちらは彼女が騙した相手もそれぞれがまっとうな生き方をしている人間じゃないので、さらに感情移入して、なんとかうまくいけばいいのに、という気分になってくる。犯罪者対犯罪者なら、どっちもどっちだしね。しかし、主人公の原口元子はそれほどかわいげのある女じゃない。もっと哀れをさそう女だったら、もっと応援する気になるんだろうけど。その点では和賀もヤなやつではある。

清張はほんと、ヤなやつを描くのがうまいね。 

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November 07, 2004

京極・浅田・島田・司馬

「京極堂シリーズ」全部と「巷説百物語」「わらう伊右衛門」(わらう、の文字が出ないんだよね)を読了。「京極堂シリーズ」は結局、タイトルを書けないや。面倒で。
「伊右衛門」の解説は横山泰子さんが書いていた。歌舞伎研究家で、「色悪」について書くっていってた、伊右衛門の色悪ぶりを横山さんの明晰な分析で読みたい。

「蒼穹の昴」浅田次郎
たいへんおもしろうございました。「おいら」って……会話部分になると、急にくだけるのは、意図してのことなんでしょうね。
ついでに「歩兵の本領」と「王妃の館」も読み、レンタルビデオで「壬生義士伝」を見た。
テレビの「新選組!」で鴨をやった佐藤浩一が「壬生」では斎藤一、テレビで山南をやった堺雅人が「壬生」では沖田なのね。

島田荘司の新刊「龍臥邸幻想」
さっそく買って読了。ミタライと吉敷の初共演。というか、ミタライは声だけ。主人公は石岡。
吉敷の娘のユキちゃんが高校生って、石岡・ミタライ、どんどん老けていくばかり? 吉敷・ミタライはいいとしても、石岡は……。

司馬遼太郎の「坂の上の雲」は高校生のときに読んでいるのだが(秋山兄弟、とくに弟の真之に惚れこんだものだ)、読書会で読むことになって再読しはじめた。京極のあとに読むと、文章がストレートで、明るくて、空気がすっとしている感じ。いや、京極もすごく気に入ったんだけどね。でも、やはり司馬遼太郎の文章は読んでいて気持がいい。

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October 18, 2004

鬱の人

京極堂シリーズを全巻読破したことをメモしとくべきなんだけど、タイトルの漢字が難しいので、変換が面倒かなと思ってぐずぐずしているうちに何日もたっちゃった。シカゴまでもっていって(最後の2冊だけ)読んでいた。京極作品はあと時代物が残っているのだが、あまりハマっていても仕事にさしさわるしなー。てゆーか、仕事、ぜんぜんしてないよ。

京極堂シリーズの登場人物の一人、関口巽センセイにすっかり同調してしまい、このひと月、なんだか鬱々としていた。と思ったら、周辺に鬱々の人がけっこう多くって、これは気候のせいか、季節の変わり目のせいか、なんらかの原因があるにちがいない。そういえばミタライシリーズの石岡くんも鬱病だっけ。

漫画は『カレカノ』と『アンナさんのおまめ』最新刊を、マンネリと思いつつだらだら読む。
能の世界をえがいた『花よりも花の如く』――漫画界はこの世の職業をほぼ網羅しているのでは。

『暗黒館の殺人』(綾辻行人)はいちおう読了したけれど……ちょっと引いてしまう。
『アフターダーク』も読んだ。『スプートニクの恋人』系の物語ですね。これ、続くのだろうか。男はどうなったの? エリは? 最近ノベルス系小説ばかり読んでいたので、決着がつかないと宙ぶらりんのような気分になる。

最近いただいた本は牧人舎ホームページのトップで紹介している。

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September 22, 2004

京極堂シリーズ

予定通り、京極夏彦に移行。分厚い本は好きである。
京極堂シリーズ、時代ものだと勘違いして先入観を抱いていたが、じつは作品の時代背景は戦後で、おどろおどろしい雰囲気はあるものの、基本はあくまで論理というところがよい。
第一作の『姑獲鳥の夏』は持ち込みだそうだが、アマチュアとして(まだデビューしていない時期に)これだけの長編を書き上げたのだとしたら、それはすごい。
『姑獲鳥の夏』
『魍魎の匣』
を読了。いまは『狂骨の夢』を読んでいる。
シリーズ全作、真利子さんに送ってもらったので、当分楽しめる。
翻訳のほうは、ちょっと体調不良(風邪気味)のため、棚上げ中。
夏バテだよね。

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September 15, 2004

読書三昧の日々

ミタライシリーズで満足したかと思ったのに、引き続き「吉敷刑事シリーズ」にもハマった。そのあと、必要があって司馬遼太郎の『花神』を読んだら、冒頭から長州(周防?)の「吉敷」という地名が出てきて、その偶然にびっくり。
この2週間、引きこもって本ばかり読んでいたので、記憶がわりにタイトルのみメモ。

島田荘司
『飛鳥のガラスの靴』
『ら抜き言葉殺人事件』
『奇想、天を動かす』
『消える「水晶特急」』
『確率2/2の死』
『Yの構図』
『羽衣伝説の記憶』
『展望塔の殺人』
『灰の迷宮』
『涙、流れるままに』
『吉敷竹史の肖像』
『毒を売る女』
『見えない女』
『島田荘司読本』
『踊る手なが猿』
『三浦和義事件』
 ロス疑惑のときのマスコミの大騒ぎはまだ記憶に鮮やかだが、あれは本当に変な事件だった。冤罪事件の関連で「秋好事件」も読もうかと思ったのだが、ページを開いたとたん、殺人現場の見取り図がぱっと目に入った。現実にも悲惨な事件が多すぎて、これ以上殺伐たる気分になるのはいやなので、本を閉じてしまった。近頃、こんなに一人の作家にハマったのは珍しい。最後は惰性(ないし意地)で読んでいたような感じもする。この熱中癖がよい方向へ働くと、集中力とか仕事熱心とかになってプラスなんだけどな。


『CEOアカデミー』デニス・C・ケアリー他、鈴木主税訳
『覇権か、生存か』ノーム・チョムスキー、鈴木主税訳
『神々のハワイ』スザンナ・ムーア、桃井緑美子訳
『ダイアン・フォッシー』柴田都志子
『超零戦、飛翔せよ!』菅谷充

漫画
『舞姫、テレプシコーラ』山岸涼子
『ユキポンのお仕事6、7、8』東和弘
 ネコが働いて金を稼ぐ……ネコの手も借りたい。
『のだめカンタービレ10』二ノ宮知子

『女性学との出会い』水田宗子
『樋口一葉「いやだ!」という』田中優子
最近の新書ブームはいったい何なのでしょう。上2冊は新書。どちらもフェミニズム関連。

『アフターダーク』村上春樹
発売当日に買って、積んでおく。楽しみにちびちび読むのだ。

『花神』司馬遼太郎
司馬遼太郎はいつ読んでもおもしろい。人間と歴史への洞察力。
全集を再読するのもいいかなと思っている。『花神』の主人公、村田蔵六(大村益次郎)はもともと蘭学の翻訳者だから、仕事の上では先輩ともいえなくはない。幕末の日本においては、翻訳という仕事の第一の目的は必要な情報や進んだ学説をとりいれることだった。字義のみを訳すのではなく、本質を理解することが大事――その点で、大村は天才的だった。はたして、私は英語で書かれていることを本当に理解できているのか、と思わず反省。司馬遼太郎の本を読んでいると、なんにしても卑劣な生き方はしたくないねと思わされる。それって、すごい教科書(人生の)ではないのかな。


『暗黒館殺人事件』綾辻行人――綾辻ワールドはもう十分という気もするが、せっかくなので買ってみた。館がどんどん豪邸になっていく。広すぎ!

この次は、京極夏彦にハマる予定(未定)

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August 17, 2004

ネジ式ザゼツキー

というわけで、ミタライものの最新刊、「ネジ式ザゼツキー」(講談社)を読了し、これで新刊を待つファンに追いついた。いわゆる、ひとつのeraというか、phaseというか、ハマりぶりが終結。「ネジ式」は毀誉褒貶あるらしいが、私としてはたいへん面白かった。ミタライのキャラクターよりも、ファンタジーとその解読という、理論部分がとても興味深く、美しくも奇想にあふれたシマダワールドを楽しませてもらった。

「ロシア幽霊軍艦事件」講談社
「上高地の切り裂きジャック」原書房
「セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴」原書房
「魔神の遊戯」文藝春秋

ミタライもの以外
「嘘でもいいから殺人事件」
これに隈能美堂巧(クマノミドタクミ=愛称タック)という若者が出てくるが、中野の事務所のそばにクマノミドー眼科というのがある。最初、カクレクマノミ(ファインディング・ニモの)クマノミかと思っていたら、こういう字だそうだ。

吉敷刑事もの
「出雲伝説7/8の殺人」光文社

「ネジ式ザゼツキー」にはエッセー「マンハッタン物語」が付してあって、この次のテーマはマンハッタンの摩天楼になるのだろうかと思わされた。私もこの10月にシカゴへスカイスクレーパーを見に行く予定なので、シマダワールドをぐるっと一巡りして、自分の興味の世界にうまく着地したような気がする。

あとは、島田荘司氏の新作を待つのみ(というか、吉敷刑事シリーズまでずるずると引きずりそうなのだが)

それ以外に読んだ本
綾辻行人「眼球綺譚」集英社 
この手の怪奇物(グロ?)は苦手だ。

世界の建築・街並みガイド6「アメリカ/カナダ/メキシコ」エクスナリッジ
シカゴ旅行の下調べ。環境設計のオームステッドについてのコラムが収穫。


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August 09, 2004

最後のディナー

引き続き、今度は角川文庫で、『最後のディナー』と『ハリウッド・サーティフィケーション』を読了。

登場人物のレオナ松崎が自分のことを「このしつこい性格を恨むわ」というセリフがあったが、あくまでシマダ本を読みつづける私もそうとうしつこいかもしれない。

石岡くんが英会話教室に行く話なんて、ずるいよ。ファンの弱みをうまくついて、ますますハマってしまう。

その後、bk1で未読のミタライものを注文。ミタライものを読破しても、まだ吉敷刑事ものがある。

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August 08, 2004

アトポス

『眩暈』を読み終え、『龍臥亭事件』それから『アトポス』と読みついだら、いちおう島田荘司を堪能しつくした感じになった。とってもおもしろくて、楽しめました。アジアカップで日本が優勝したのを見とどけたあと、深夜まで本を読んでいたら、なかなか寝付けず、けさは眠い。ところが、またしても本屋に行ったら、こんどは角川文庫のを2冊見つけて買ってしまった。まだまだ続くシマダワールド(マイブーム)。

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August 01, 2004

ミタライアンとカズミスト

島田荘司の御手洗潔シリーズ、熱烈なファンがいるらしいけど、御手洗ファンをミタライアン、石岡和巳ファンをカズミストと呼ぶんだってね。キャプテン翼の「翼か岬か」という感じ?

私はどちらかといえば……御手洗さんも石岡君も両方好きです。二人の関係がおもしろい。

もう20ん年前から続いているシリーズをいまさら(一気に)読破しているわけだが、その後、読んだ本(メモ)。

『御手洗潔のダンス』
『御手洗潔のメロディ』
『Pの密室』
『暗闇坂の人喰いの木』
『水晶のピラミッド』
いまは『眩暈』を読んでいる。以上講談社文庫。
そのほか、吉敷竹史シリーズの
『寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁』
それ以外の
『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』を読了。
ミステリーとSFは意図的に距離をおいてきたので、こんなに好みならもっと早く読んでおけばよかった。誰かもっと早く私に教えてくれればなー。やはり同時代で読む小説の楽しさ――早く新刊が出ないかなと待ち望んだりする――ってあるよね。

いま、同時代でこれは読むべき、という本のお薦めがあったらぜひ教えてください。

でも、たしかにミステリって癖になってつい読みふけってしまうし、読みおわっても次から次へと手がでて、一種のアディクト状態になり、時間をとられて困る。TVのプロ野球中継も時間がもったいなくて見ないようにしているのに。

昔、詩人の長谷川龍生さんと話をしていたとき、サラリーマンの通勤風景を見ていると満員電車でタブロイド新聞なんかを読みふけっていて、「あれは時間をうっちゃってるんだね」といわれたことがある。私も仕事がイヤで、逃避的にミステリに没入しているんだとしたら、ちょっとまずい。

でもまあ、夏だからよしとしよう。緑陰読書の季節だからね。はやく全部読み終わって、新作を待ち望む大勢のファンと歩調を合わせたいものです。

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July 25, 2004

まだまだ新本格

あいかわらず綾辻を読んでいるが、さらに島田荘司が加わって、交互に文庫を読破。ミタライキヨシとシマダキヨシがごっちゃになりかけている。どうして、一気に読もうとするんでしょうね>私

6月以来読んだ綾辻行人の作品
『十角館の殺人』
『水車館の殺人』
『迷路館の殺人』
『人形館の殺人』
『時計館の殺人』
『黒猫館の殺人』
『霧越邸殺人事件』(これだけ新潮文庫。あとはすべて講談社文庫)
『緋色の囁き』
『暗闇の囁き』
『黄昏の囁き』
つまり講談社文庫で初期のものから読んで、あとは新潮社文庫、光文社文庫、それに最近の講談社文庫・角川文庫・集英社文庫が残っているわけだ。

図書館で1冊ほど借りてみたが、図書館には全作品そろっているわけではないし、それに汚い本はいやなので、結局、その1冊以外は全部買ってしまった。

6月24日に北海道から帰る飛行機の中で読もうと、函館空港の売店でふと『水車館の殺人』を買って以来だから、およそひとつきでこれだけ……けっこうなハマりぐあいである。

ついでに島田荘司のミタライ・シリーズにもはまってしまい……
『占星術殺人事件』
『御手洗潔の挨拶』
『異邦の騎士』(改訂完全版)
『斜め屋敷の犯罪』
以上、すべて講談社文庫を読了。
現在は『暗闇坂の人喰いの木』を読んでいるところ。
光文社文庫も2冊買ってある。

ミステリは読みだすとクセになって止められない止まらない。かっぱエビセンのようだ。

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July 18, 2004

『世界を変えた地図』

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新刊が出ました。イギリス地質学の父と呼ばれるウィリアム・スミスの生涯をたどり、世界初の地質図が作られたいきさつが語られている。

この国家的な地質図作成という壮大なプロジェクトはスミスがほとんど独力で、15年かけて完成させた。その間、スミスは破産して債務者監獄に入れられたり、せかっく作った地質図を貴族のお気楽なディレッタント地質学者(自称)に盗作されたりとさまざまな苦労を重ねた。

しかし、晩年は功績が再評価され、ウォラストン・メダルという地質学会のノーベル賞のような栄誉の第1回受賞者となった。ハッピーエンドともいえるので、読後感がとてもよい。

地図の描写も生き生きしていて、翻訳したあと、ロンドンまで実際に地図を見にいったほどだ。この本を読んだ人はきっと実物の地図を見たくなるはず。ロンドンへ行く機会があったら、ピカデリーのロンドン地質学会を訪ねて(要電話予約)ぜひ実物の地図を見てきてください。大きくて、色がきれいで、とても美しいですよ。

各章の扉にアンモナイトの図がある。途中の11章だけはウーライト(石灰岩の一種)の顕微鏡拡大図で、この章だけは著者の回想になっている。南西イングランドの独特の地層の描写も興味深く、コッツウォルドやバースへも観光だけじゃなくて、地質学的見地で見るとおもしろそうだと思った。去年の冬、ロンドンへ行ったついでにバースやコッツウォルドへも行って、イングランドの田舎を見てきました。楽しかったな。

いずれにしても、新刊が出るのはわくわくしてうれしいです。この楽しさ、充実感があるからこそ、出版翻訳はやめられないんだよね。印税制度が理不尽だとはわかっていてもね……。

あとで知ったんだけど、翻訳家の宮脇孝雄氏がこの本の原書を紹介している。その中で宮脇さんが一節を訳しているので、つい自分の訳文と比較検討してしまった。自分の訳文がへんてこだったらヤダなと思ってのことだけど、まあ間違いはないようでほっとひと安心。あいかわらず、英語には自信がなくてひやひや。

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July 16, 2004

ABC

青山ブックセンターが倒産、16日かぎりで店を閉めるという情報に、強烈ショック!!
好きな本屋さんだったのに……私の(翻訳した)本もたくさん置いてくれたのに……

いよいよ本の世界も終焉が近づいているのだろうか。

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July 11, 2004

霧越邸殺人事件

『霧越邸殺人事件』読了。綾辻行人、新潮社文庫。あいかわらずアヤツジである。
時代のパラダイムシフトをテーマにして、雰囲気や想念が強く打ち出されている。時間の移り変わりという、ある意味で救いのない運命を描いているところが、ちょっと『虚無への供物』に通じる。探偵モノとして、謎解きの論理的なカタルシスはない。見立て殺人のトリックはちょっとね。「館」はあいかわらずステキ。迷路館みたいな非現実的なもののほうがおもしろいと思うのは私個人の好みである。

これまでの館シリーズと囁きシリーズは講談社文庫だったが、これは新潮社なので、ひさびさにYONDAパンダの三角マークをゲット。パンダイラストは旧版のほうが好みだが。

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July 04, 2004

綾辻中毒

ミステリは時間つぶし、なんていっておいて、あいかわらず綾辻行人を読んでいる。本格ものがけっこう好きらしい。あと、なんといっても家の見取り図がいいよね。しかも、シリーズものが進むにつれてどんどん見取り図が複雑に、豪勢になっていくのが楽しい。
最初に読んだのが建築家の中村青司シリーズ2作目「水車小屋の殺人」で、さかのぼって第一作の「十角館の殺人」、それから一つ先へ飛んで4作目の「人形館の殺人」、次に囁きシリーズの第1作「緋色の囁き」、そしていまは3作目の「迷路館の殺人」を読んでいるところ。こんな家ないよ、と思いつつ、あったら楽しいね、と。

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June 26, 2004

新本格

日本のミステリはある時期から読まなくなっていたんだけど、このあいだ、ふと手を伸ばして、いわゆる「新本格派」の古典を読んでみたら、わりと好みだった。もともとエラリー・クイーンは大好きだったしね。中学・高校時代にはよく読んだ。

なぜミステリを読まなくなったかというと、ノンフィクション翻訳の仕事をするようになってから、それでなくても読む(読まなければならない)本がすごく多くて、暇つぶしの読書なんて贅沢はできなくなったからなのだ。

では、いまは暇つぶしができるのかというと、そんなことはないんだけどね。あ、それに、暇つぶしなんていってはミステリ作家に失礼だが。

むしろ、純粋な楽しみとしての読書、といったほうがいいかな。なにかに役立つという下心のある読書ばかりになりがちだった昨今、完全に虚構の世界で現実に役に立つわけでもないミステリが新鮮だったということか。

で、初めて読んだ国産新本格ミステリだが、書かれたのはもう20年も前なのね。しかも筆者は若くて当時20代だったらしい。自分から意図してのことだが、あるジャンルを視野から外して十数年もたつとずいぶん疎遠になってしまうものだ。

それでも、読むべき、あるいは読みたい本は山のようにあるので、困るところ。時間はお金で買えないからね。

というわけで、読んだ作品はなにか、と聞かれるかな? 綾辻行人の『十角館の殺人』と『水車館の殺人』。著者があとがきで、シリーズ物にするつもりはなくて書き始めたので、シリーズになるとわかっていたら、探偵の名前をもっと別の(カッコイイ? あるいは印象的な?)名前にしときゃよかったとぼやいていたのがおもしろかった。

その探偵の名前は島田潔。たしかに、インパクトには欠けるかな。

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