世界の作家32人によるワールドカップ教室
続いて新刊訳書のお知らせです。
『世界の作家32人によるワールドカップ教室』
マット・ウェイランド、ショーン・ウィルシー編、白水社、2800円
アンソロジー(ワールドカップ関連のデータ付き)で、32人の作家が来る6月のワールドカップ出場国32カ国をテーマにエッセイを書いています。原題はThe Thinking Fan's Guide to The World Cup 「考えるファンのためのW杯ガイド」
考えるファンということは、Not Thinking Fan もいるんでしょうね。
翻訳は8人がかりです。私はイングランド、ウクライナ、ポーランド、オーストラリア、ポルトガルを翻訳しました。
ポーランドは共産圏から自由化への転換に苦闘する社会で、「連帯」という世界でも類のない大衆による政治行動の歴史をもつ国ならではの葛藤について書かれています。ちょうど『貧困の終焉』でポーランドの経済改革の一章があったので、データ的にはやりやすかった。革命はワールドカップよりも血を沸き立たせるものらしいです。
イングランドはベストセラー作家で、熱狂的なアーセナル・ファンとして有名なニック・ホーンビィが書いています。ここでもアーセナル一筋。有名作家の文章を翻訳するのは緊張しちゃいますね。ちょっと論理に飛躍があるのが、いかにも作家という感じでした。タイトルにもある「作家」って、サッカーとかけているの?
ウクライナは、天才的なストライカー、アンドリー・シェフチェンコ(シェヴァ)が有名。同じ名前をもつウクライナの国民的詩人、タラス・シェフチェンコと対比して、ウクライナの哀しみの歴史をふりかえる。チェルノブイリもウクライナにあります。このエッセイを読むと、シェヴァの試合が見たくなります。ワールドカップが楽しみ!
オーストラリアは『ポビーとディンガン』で人気作家になったベン・ライスが書いています。これも、ちょっとじんとくるいい話。オーストラリアは今後アジア・リーグに参加することになったので、日本もうかうかしていられません。オーストラリアは日本と同組なので、この一戦も楽しみですね。オーストラリア、思いのほか強そう。というか、ワールドカップに出場する国は、どこも強いのよね。
ポルトガルは、いちばん分量も多くて、わりと苦労しました。舞台がマデイラ島なのです。ポルトガルだからといって、フィーゴのフィの字も出てこない。けど、クリスティアーノ・ロナウドは出てきます。(ついでにいえば、越川さんが「あとがき」に書いているアドリアーノ・ロナウドはクリスティアーノのまちがいじゃないかな?)ポルトガルのエッセイはサッカーというより、ほとんどサーフィンについて、です。それもまたおもしろい。
ほかのかたが翻訳したエッセイも何本かは英語で読んだけど、どれも作家ならではのひねりが効いていて、さすがに作家というのは違うなーと感心したものでした。翻訳で全部読むのが楽しみ、楽しみ。
去年の5月、トルコのイスタンブールへチャンピオンズリーグの決勝をいっしょに見にいった実川元子さんも翻訳者の一人です。パラグアイ、スウェーデン、コートジボワール、セルビア・モンテネグロ、チェコと渋い選択(自分でこの国がやりたい、と志願したそうです。私は編集の藤波さんにおまかせでしたが。)
すっごく楽しい仕事でした。こういうのまたやりたいな。





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